日本における「マリーシア」という言葉のイメージは非常に悪いもので、あまりポジティブな言葉としては浸透していません。しかし世界的にみて、実際のところはどうなのでしょうか。今回の記事ではマリーシアの本当の意味について、紹介します。ご覧いただければ、これまでのイメージを全く覆すものになるでしょう。是非、最後までご覧ください。
マリーシアとは
マリーシア(malicia)とは、ポルトガル語で「ずる賢さ」や「狡猾さ」といった意味の、サッカー大国ブラジルが発祥の言葉です。
サッカーの試合時における、自分たちが有利になるように試合を運ぶためのさまざまな駆け引きを指す言葉ですが、厳密な定義は存在しません。
「悪意」や「意地悪」といったネガティブにとらえられる場合と、「機敏」や「抜け目のなさ」といったポジティブにとらえられる場合があり、また、国によっても解釈が異なる言葉です。
日本でのマリーシアのイメージ
日本で使われるマリーシアは、どちらかと言えばネガティブな印象のものが多く、審判にファウルを取られなければ何をしてもOKという非紳士的、汚いプレーを指していると思います。
具体的なマリーシアのプレーには、審判に見えないところでユニフォームを引っ張る、こづく、足を引っかけるなどがあります。当たり前ですが、サッカーにおいてフィールド上には22人の選手がいて、審判は副審を含め3人しかいません。全てのプレーをチェックすることは不可能であり、見えない部分は必ず存在します。
マリーシアとは、そうした盲点・死角を突くようなプレーであり、褒められるようなプレーとは言えません。ただし、それは日本に限って言えば、ということになります。
マリーシアのネガティブな具体例
具体的にはどのようなプレーがマリーシアにあたるのか、まずはネガティブなプレーからご紹介します。
- ファールを受けて倒れ込んだ際に時間稼ぎをする
- 交代の選手がゆっくりとピッチを歩き時間稼ぎをする
- 相手のフリーキックでボールの前に立ち、試合の再開を遅らせる
- ボールをすぐに相手に渡さず、試合の再開を遅らせる
- 相手を苛立たせるような暴言をする
ブラジルでは、こうした意図的に相手を傷つけるような汚いプレーは「マランダラージ(malandragem)」という別の言葉で区別されています。
マリーシアのポジティブな具体例
それでは次に、マリーシアのポジティブなプレーをご紹介します。
- ファールを受けたら倒れこんで、試合を落ち着かせる
- 相手の陣形が整わないうちにフリーキックを行う
- ボール支配率を上げ、パス回しを長時間続けて相手を疲弊させる
- 走るべきシーン(ON)と休むべきシーン(OFF)をはっきりさせる
- DFの攻撃参加など、試合状況に応じて臨機応変にポジショニングを大きく変える
よく「シミュレーション(simulation)」と混同されがちですが、シミュレーションは審判をあざむくスポーツマンシップに反するプレーであるのに対し、上記のようなポジティブなマリーシアはルール上問題ない、賢さの伴うスポーツマンシップに則ったプレーとして区別されています。
各国におけるマリーシアのイメージ
「マリーシア」という言葉の発祥国ブラジルでは、「ずるい」だけではなく「賢い」技術として、ポジティブな意味合いで用いられ、マリーシアも使いこなすことができて選手として評価される傾向があります。
逆に日本では、マリーシアはシミュレーションや遅延行為といった、ネガティブなものとして嫌われるケースがほとんどです。その背景には、「スポーツは正々堂々とやるべきだ」、あるいは「敗者をねぎらうべきだ」といった日本独自のスポーツ文化が大きく関係していると言えます。
まとめ
以上のように、マリーシアは「ポジティブ」「ネガティブ」両方の側面を持つ、一言では言い表せないサッカー用語です。
また、近年はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の普及により、これまで埋もれていたファールを見逃さず、シミュレーションを暴けるようになってきたことで、マリーシアは今後、正しい定義にのっとり、より洗練されたずる賢いプレーに進化していくことと想像されます。
今後サッカーを観戦する際は、このインテリジェンスに富んだ奥深い「マリーシア」という技術に注目してみてはいかがでしょうか。